もしも1970年代にポケモンがあったら!? 超個性的グッズ「pokémon time」誕生秘話
2008年、ポケモンセンターのオープン10周年を記念して発売された「pokémon time(ポケモン タイム)」。懐かしいけど古くない、シンプルで洗練された印象の文具や雑貨が、かわいいもの好きな女性ファンをはじめとして多くの人々の共感を集めました!
そんな「pokémon time」を手掛けている、世界的デザインチーム「play set products(プレイセットプロダクツ)」のデザイナーの中野シロウさんに、今回、ポケモン公式Twitterアカウント「ポケモン情報局」がインタビュー!
実はこの中野さんは、クルマや古着、ゲームの筐体、ぬいぐるみなど、ありとあらゆる「モノ」を自宅にコレクションする、「モノマニア」。そんな中野さんが手掛ける「pokémon time」には、「かわいい」だけじゃない、モノマニアならではの知識や気づきが、随所にちりばめられています。
今回の特別インタビューには、「『pokémon time』は、ポケモンセンターに来たお母さんやお姉さんに向けて当初はスタート」、「パッケージには、開封する際にワクワクするような秘密がある」、「キャラクターの黒目は真正面ではなく、別方向を向いているほうがかわいく見える」など、思わず人に話したくなるようなお話が満載です!
8月25日(土)に発売予定の、第11弾の情報にも注目!
記憶に残るし、言いやすい。略して「ポケモン」の秀逸さ!
Q_中野さんは、「pokémon time」のお仕事をされる以前からポケモンをご存じでしたか?
A_もちろん知っていました。『ポケットモンスター 赤・緑』の発売と同じ年に長女が誕生したこともあって、子どもの成長と連動するように、ポケモンも自然と自分の中に入ってきました。
長男は高校生ですが、今年も劇場でポケモン映画を観るそうです。僕から見て、ポケモンは卒業するようなコンテンツではないんですよ。なんせ、大人もポケモンに夢中ですから、「大人なのにキャラクターが好きなのは恥ずかしい」なんて風潮にはならないんです。卒業の時期がないんですよね。
Q_初めてポケモンを見た際、どんな印象を持ちましたか?
A_今、ポケモンは世界中から認知されている、まさに日本を代表するキャラクターですが、発売当初からその雰囲気はあったと思います。誰も見たことがない、まさに新しい発明のようなゲームだったので、みんな一気に夢中になりましたよね。同時に、『ポケモンGO』などの新しい展開も常にあって、それが毎回こちらの想像を超えてくる。アニメや映画、漫画やグッズなど、他媒体への展開もうまいし、それらを発表するためのCMやイベントにも力を入れている。こういったトータルでの動きが、非常に素晴らしい。世界中のキャラクターブランドの参考例になっていることは、間違いないでしょう。
それと「数」が凄いですよね。初めてポケモンを見たとき、「誰がこんなにたくさんのポケモンをデザインしたんだ!」と驚きました。自分がデザインしろと言われたら、100匹を越えたあたりから苦しくなってくるんじゃないかな。
あとは、「ポケットモンスター、略してポケモン」というネーミング。記憶にも残るし、言いやすい。ポケモン自体の名前も秀逸ですよね。「チコリータ」なんかは名前だけでかわいいし、「ヤドン」はまさにヤドンという感じ。「ピカチュウ」という名前を思いつく、ネーミングセンスがすばらしい。ただ、ピカチュウ人気の秘密は、あの黄色にもあると思いますね。黄色は、子どもが最初に認識する色だとも言われているし。
Q_ちなみに、お気に入りのポケモンはいますか?
自分では絶対に思い付かないデザインなので、「デオキシス」。良い意味でポケモンらしくないデザインで、「こんなポケモンもいるんだ!」と感動しました。でも、かわいいのも好きなので、チコリータやヤドンも魅力的です。ヤドンはどことなく愛犬に似ていて、いっしょにダラダラしたくなるような雰囲気がありますね。
Q_「pokémon time」誕生の経緯について教えてください。
A_12年ほど前、僕のホームページに、当時、ポケモンセンタートウキョー店の統括者だった現在の宇都宮代表取締役から直々にアポイントメントがあったんです。僕もポケモンが好きだったので、「やった!」と思いましたね。その後、すぐに石原社長を紹介されて、いろいろなお題をもらいました。
その中の一つが、「男の子といっしょにポケモンセンターに来たお母さんやお姉さんが欲しくなるものを企画してほしい」だったんです。当時のポケモングッズは、男の子向けのかっこいいものが中心で、女の子向けのかわいいものが少なかったんですよ。石原社長から提示されたターゲット自体は「play set products」が得意とするターゲットと同様だったので、企画はスムーズに進めることができました。ただ、初めて石原社長にお会いしたときはとても緊張して、あまり喋れなかったですね。「何か質問はありますか?」と聞かれても「特にありません。ありがとうございます。」などと答えていましたよ(笑)。
「pokémon time」はパッケージを含めて1つの商品
Q_企画スタート時、印象深かったことを教えてください。
A_ 「pokémon time」は今年で10年目。長い付き合いの今でこそ、何を作るかはポケモンさん側にある程度おまかせしているのですが、スタート当初はアイデア会議から参加していました。「ロケット鉛筆が作りたい」なんて、自分で考えて提案するのも面白かったのですが、なんせ量が多いので、大変ではありました。
ただ、やることが多いという点では、今も昔も同じかもしれません。僕は「モノ」が好きなので、どうしても細部にこだわってしまうんです。ポケモンのイラストはもちろん、パッケージのデザインや使用する素材をどうするかなど、商品に関わることは、今でも細かく相談させてもらっています。
Q_パッケージのどんな箇所にこだわるんですか?
A_ 「pokémon time」の商品は、パッケージを含めて1つの商品なんです。例えば、ストラップのパッケージでは、背景の台紙の裏側にもポケモンのイラストをプリントしています。イラストはランダムで、どのポケモンがひそんでいるかは、開けてからのお楽しみ。商品だけではなく、パッケージもいっしょに保存してもらえると、うれしいです。
開けるのが楽しい、という意味では、ギフト向きでもありますね。パッケージがしっかりしていると、「あの子にあげたい」という発想につながりやすいんです。女性は、女性同士で贈り物をするのも好きなので、そういった要素が人気につながったという側面もあるかもしれません。
Q_素材の場合は、どんなことにこだわりますか?
A_例えば、チコリータのぬいぐるみでは、素材に別珍(ビロード)を使用しています。実は、別珍のぬいぐるみって、機械を使った大量生産が難しいんですよ。別珍は表面の毛先が短いので、縫い目がすべて見えてしまうし、1回でも針を通すと穴が空いて戻らないので、縫い直しも不可能です。なので、ぬいぐるみの素材に選ばれることは、滅多にありません。けれどもそれは最近の話で、手縫いが主流だった昔の頃は、「ぬいぐるみといえば別珍」くらいのイメージだったんです。僕なんかの世代は、別珍のぬいぐるみを見ると、どことなく変な感じがするというか、「郷愁」を感じてしまうんですね。
―― 造詣が深いからこそ、ほかにはないものが作れる。
A_デザインや企画において大切なのは、「知識」だと思っています。例えば、僕は全方位型のマニアなんです。家には、クルマや古着、ゲームの筐体など、ジャンルを問わずいろいろな「モノ」がそろっていて、どれもお店を開けるくらいの数がある。ぬいぐるみも1万点くらい持っていますよ。それらを一つ一つ眺めていると、なんとなく気づくことがあるんです。そうやって得た知識や気づきを、色使いや素材選びにも反映しています。